五〇六〇ビスコンティ

老いて尚、いい動きを。

僕俺僕俺

自宅では基本、節約としてエアコンを使わずに扇風機を活用している。更なる節約として風量を最弱の微に固定して一昼夜を過ごしていたが、しかし流石にここ最近の猛暑に耐えられなくなり、思い切ってその次の風量である弱に切り替えてみた。

するとどうだろう。もはや強なのではと思うほどの風圧で、このままでは身体ごと部屋の隅に吹き飛ばされやしまいかと恐れすら浮かんでしまった。

提案としては微と弱の間に、言うなれば微弱というのを設けてはいかがだろうか。風圧を徐々に慣らしておくことで老体にも優しい扇風機ライフが送れるであろう。

話は変わるが、男性の一人称も僕と俺の間の言葉が欲しいと常々思っている。僕では弱いし俺では強い。これも間を設けるならば、先程の微弱を倣って僕俺ということになるが。

「もしもし、僕俺僕俺、僕俺だけど」

「ん、何だって?」

「僕俺さぁ、さっき交通事故で……」

「ご高齢? あぁ、確かに私はご高齢だよ、何せ今年で90だからねぇ」

「いや、ご高齢じゃなくて僕俺。あのね、さっき交通……」

「ん、80だったか? はて、どっちだったかのぅ。どうだ、覚えとらんかい?」

「知らないよ、僕俺は。ちょっと一旦聞いて、孫の話を。さっきね……」 

「知らないぃ!? 孫だったら覚えていて当然じゃないかいぃ!?」

「急にどうしたんだよ」

「さぁ、当ててごらん!」

「えぇ? えーと、じゃあ83!」

「残念、私は今年で118歳さ!」

「ギネス!」

僕俺の浸透により、振り込め詐欺の被害件数が減少する未来が見えた気がする。扇風機の風量から思わぬ結論に辿り着いた。風が吹けば何とやらだ。

+3ビスコ

 

【6ビスコ

質より量!

最近は専ら、業務スーパーで食材を買い揃えることが多い。食に関しては「質より量!」と普段から息巻いている私なので、贔屓にさせてもらっているのだ。

いつものように惣菜コーナーで豊富な種類のサラダに目移りしながらも大豆うま煮1kgを手にした瞬間、近くにいた老人に話し掛けられた。

「それ、美味しいよ」

まるでRPGに出てくるNPCを思わせる、ごく自然な語り口だったので思わずその商品を無意識に籠に入れてしまった。もしかすると今後、冒険を続ける上で重要なアイテムになってくるのかも知れない。

竜王の好物ならば、これを与えている隙に一撃を食らわせることも可能だろう。天にかざすと大豆の一粒一粒からロトの紋章が浮かび上がってきそうだ。

そう考えると不思議と勇気が湧いて、足取りも軽やかにレジへと進む。

その日の夕食、さっそく例のうま煮を食してみた。

そうでもなかった。

0ビスコ

 

【3ビスコ

タケちゃんかキクチパイセンか

長財布を購入した。タケオキクチのいいやつである。

元来ブランドに疎いのでこういった表現しか出来ず、まるでタケオキクチがいい奴みたいに思えてくる。いや、実際にいい奴なのかも知れないが。

タケオキクチ、果たして私より年下なのか年上なのか。それによって、タケちゃんかキクチパイセンかで呼称を改めなくてはならない。

それはともかく、二つ折りの財布を長年愛用していた私も、これでようやく大人の仲間入りが出来た気がする。54歳の、いい大人だ。

+2ビスコ

 

【3ビスコ

ダビド・ビスコンティの如く

私は今日、54歳になった。50でも60でもない半端な老いを日々、実感している。

しかしながらそろそろ反抗しなくてはと思い、決意したのだ。老いて尚、いい動きを心掛けて生きていくことを。私がまだ働き盛りで思う存分いい動きが出来ていた1995年当時、Jリーグのフィールドで活躍していたダビド・ビスコンティの如く。

突然ではあるが、何事にもルールは必要だ。このブログでは、いい動きの単位を【ビスコ】とし、合計135ビスコでゴールとする。因みに135という数字はビスコンティが現役で獲得した総得点数であり、ゴールが掛かっているのだ、と言い切る程のことでもない。

+1ビスコ

 

【1ビスコ